歯の移植
歯の移植により
噛む感覚を取り戻す
歯の移植
当クリニックでは、歯を失ったときの対応策のひとつとして自家歯牙移植を行っています。
「移植」と言うと、心臓などの臓器や角膜などを想像される方が多いと思います。しかし、条件が成立すれば、歯の移植も可能なのです。特に親知らずなどの噛み合わせに役立っていない歯がある場合の選択肢として提案することがあります。
歯の移植について
歯の移植とは
歯を失ったときは入れ歯やブリッジ、インプラントなどの人工物で補うことが多いです。これらの治療にはそれぞれメリットがありますが、歯根膜が無いことなど天然の歯には及ばない点があります。
一方、移植可能な歯があるという条件が成立すれば、自家歯牙移植が可能です。移植するのは天然歯である自分自身のものなので、人工物よりも優れた点が多数あります。
- 費用
- 保険で適用
- 治療期間
- 3カ月〜4カ月
- 治療回数
- 10回から
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Meritメリット
- 歯根膜を活かすことができます
- 噛む力の制御が可能です
- 若い方ほど成功率が上がります
- 自分の歯なので安全性が高いです
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Demeritデメリット
- 公的医療保険が適用されない自由診療です
- 条件を満たした歯がないとできない等、適応できない場合があります
- 生着できない症例もあります
- 予後の安定性にはばらつきがあります
歯根膜の働き
「歯根膜」とは、歯の根と歯槽骨の間にある膜状の組織です。歯周靭帯と呼ぶこともあります。
歯根膜は歯にかかる荷重を和らげるクッションとして機能します。また、歯根膜は噛む力を感じ取る機能を持っているので、硬いものを噛むときと柔らかいものを噛むときの力の制御に役立ちます。
インプラント治療には優れた点が多数ありますが、歯根膜はありません。その点で移植の優位性があるのです。
歯の移植が適応する例
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事故・外傷などからの再植
交通事故やスポーツ中の衝突などで、歯が抜けたり脱臼したりすることがあります。しかし、状態が良ければ、元の位置に戻す「再植」という処置も可能です。
この場合に重要なのは、歯根膜が残っていることです。歯根膜は再生能力があるので、多少破損していても生着できる可能性があります。ただし、脱落した歯が泥や血液で汚れているからとゴシゴシこすってしまうと大切な歯根膜が失われるかもしれません。そのため、できれば保存液に入れて持参していただくと、再植の成功率が高まります。保存液がない場合には、牛乳があればその中に入れておけば歯根膜は変性しません。それからすぐに歯科医院に行ってください。01
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欠損箇所へ移植
虫歯などで歯を失った際に、親知らずなどの噛み合わせに寄与していない歯を移植する方法です。ご自身に由来する天然歯なので、インプラントや入れ歯には無い歯根膜が存在することが大きなメリットです。またブリッジのように周囲の歯を削るデメリットもありませんし、生着すれば入れ歯のような違和感とも無縁です。
ただし、歯周病で歯を失った症例への適応は難しい場合が多いです。歯周病が悪化すると歯を支える骨がダメージを受けていることが一般的なので、即時の移植は困難だからです。骨の再生は不可能ではありませんが、それには時間がかかるので、予後の予測がつけにくいなどの難点があります。
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ドナー歯の重要性
自家歯牙移植において、移動する歯を「ドナー歯」と呼びます。ドナー歯として選ばれるのは親しらずが多いですが、適用にはさまざまな条件があります。
まず、ドナー歯である親知らずと移植先の歯の大きさがある程度一致しないと移植できません。また周辺の歯とのスペースなども問題となります。このため、実施できるかどうかの検討をしっかり行う必要があるのです。